「箱の中身はなんだろう?」というお笑い番組の定番企画がある。それは箱の中に様々な物を入れ(そのほとんどが触覚的な特徴をもつキモチワルイものである)、箱の中身を知らない人物が後ろから、箱の側面に開いた穴に手を突っ込み、触覚のみでその存在を確かめるゲームである。時にはモノではなくヒトも入っており、その時ヒトは一種のオブジェクトとして振る舞う。この作品では、箱の中のヒトと外の人は、お互いのことが認識できない関係に置かれ、唯一の手がかりは、その触覚性だけである。外の人は中の人を触るうちにその存在に気づいていき、わざとほっぺたを触ったりつねったりと、確信犯的な態度を取るようになる。お互いの認識の関係が不明瞭なまま、ゲームは進んでいき、アイデンティティを作り変える様子を構築した。
本作はチェコのアニメーション作家ヤン・シュヴァンクマイエルの「闇・光・闇」という映像作品をオマージュしたものだが、その作品のもつ主体と客体の不明瞭さ、メディアと人間の関係を、現代の情報環境においてインスタレーションとして空間的に拡張し展開する。